イザ!「スモールM&A」⑦利益以外の価値を見出したM&Aの実例
2018.12.17
A社は造成工事を内製化出来たら、もっと利益を上げることができると考えていました。しかし、造成工事のノウハウがある人間は社内に居ないことから、造成工事業を営む企業をM&Aにて取得することを考えていました。一方B社は、これまで造成工事業を営んできたものの、後継者がおらず、企業の清算を考えていました。ただ、清算の検討を進める中で、M&Aによる売却を知り、M&A仲介会社を経由しA社とのM&A検討を開始しました。B社は直近期が赤字となっていたものの、A社としてはB社の「許認可」「ノウハウ」「人脈」などに魅力を感じたことと、B社の収益改善は、A社業務の外注先をB社に集中させることで十分達成可能であると考え、M&Aを実施することとなりました。ただし、許認可以外の項目についてはB社の社長に属している項目であった為、M&A後に、B社社長を会長職として留任させることを条件としました。A社は造成工事の内製化が図れた他、B社が持っていた仕入れ等の人脈も手に入れることが出来たことから、仕入情報の強化にも繋がりました。また、造成工事の見積りを自社グループで取得することが出来るようになったことから、経営判断や商談のスピードアップが図られました。また、B社がM&A前に受注していた造成工事も継続して受注されたことから、自社グループの業務幅が広がる、という結果に結びつきました。
一方で、M&A実施に伴う懸念もありました。それは、社長を含めたA社の社員が、造成工事に関する知識やノウハウが乏しかった為に、B社のノウハウに依存する傾向がある点でした。B社の従業員が算出した見積額の検証を、A社の社員が行うことが出来ない状況が発生したのです。A社としては、自社の社員をB社に出向させ、専門的な業務を習得させる等の対応を取り、技術の属人化を防ぐ努力を行いました。
この例は、買い手企業が売り手企業に対し、収益以外の事柄を求めているということが顕著に表れています。B社は直近期が赤字決算であることから、利益の拡大を考えたらA社にとってあまりいい話ではありません。しかしA社は「B社が赤字である」以外にも、人脈や豊富な経験からなる高い技術力等にしっかりと目を向け、検討を進めました。中長期的に自社のメリットを見出すことができ、結果的には利益の拡大にもつながるM&Aになると考え、B社とのM&Aを実行しました。M&Aの失敗原因としてよく挙げられるのが「売り手企業の収益力に依存したM&A計画を組成したこと」があります。買い手企業としても、売り手企業の収益に気を取られ過ぎず、自社とのシナジーを模索するM&A検討を進めていくことが、成功への近道となるでしょう。
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