M&Aに関するコラム

イザ!「スモールM&A」⑤中小企業にとってのM&A戦略「買い手の成長プラン」

2018.12.03

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買い手企業がM&A戦略において検討すべき事項は、「自社の成長プランニング」です。具体的には、同業者をM&Aするか、他業種をM&Aするかによって変わります。
同業者のM&Aを実施する場合には、まずエリアを検討していく必要があります。売り手企業が近隣であれば、競合相手を吸収することで、売り手企業の顧客も自社の顧客にすることが出来ることから、自社エリアのシェアを伸ばす戦略として、M&Aを活用するパターンとなるでしょう。エリアシェア拡大を狙ったM&Aのメリットとしては、ガバナンスを利かせやすいという点が挙げられます。また、売り手側の従業員も、買い手企業のことを認知していることも多く、M&Aに対する嫌悪感が緩和されることがあります。売り手企業が遠方であった場合には、他エリアへの事業展開を狙ったパターンのM&Aになります。自社のエリアを拡大できることから、新規顧客獲得のチャンスが増え、また1エリアに事業が集中しないことから、事業リスクをヘッジすることにもつながります。ただし、遠隔地のM&Aはガバナンスが利きづらいことから、M&Aしたはいいものの、引き続き別会社状態が続いてしまうなど、売り手と買い手のシナジーが図られないといったリスクを含有しています。自社や市場の成熟度などをもう一度よく振り返り、自社にとっての成長戦略は「エリアシェア拡大」に振るべきか、「他エリア展開」にしていくべきなのか、よく検討したうえでM&Aを実行した方が良いでしょう。
他業種企業をM&Aする場合、多業種展開による成長を目論み、M&Aを検討していくことになるでしょう。その場合、第一に確認しなければならないのは、自社事業とのシナジーです。例えば、不動産仲介業者がリフォーム業者をM&Aで購入し、中古物件の仲介とリフォームの請負を受注していくスキームを狙ってのM&Aなどが挙げられます。こういったシナジーがある場合、新事業と既存事業間で相互補完の関係性が成り立つことから、M&A実行後の企業運営をスムーズに行うことが出来ます。一方で、まったく関連がない業種のM&Aの場合、当該M&Aを行う意義について、当事者がきちんと共有をしておく必要があるでしょう。また、他業種のM&Aを行う際には、リスク管理が非常に重要になります。買い手側が、商流や事業運営のポイント等を押さえていない場合、想定外のアクシデントに見舞われることがある為です。買い手側は、新事業に関するノウハウが欠如していることから、M&Aしたはいいものの、購入後に当該企業の業績を伸ばせず、投資回収の観点から見ると失敗と判断されるケースは少なくありません。M&A実施の前に、売り手企業の経営者も含め、M&A後の事業展開についてしっかりと話し合い、事業ビジョンの共有を図っていくことで、そういったリスクをヘッジしていかなければなりません。

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成長戦略としてのM&Aを検討する場合には、売り手企業に①どれだけの資格・許認可があるか、②顧客基盤は確立されているか、③即戦力となる従業員が在籍しているかを確認していく必要があります。また従業員に関しては、重要人物の去就についても十分ケアしていく必要があります。これらを事前に確認し、売り手側と共有することが、M&A実行後のスタートをスムーズにする為に最も重要です。また、M&A仲介会社を選ぶポイントとしても、こうした自社の成長プランニングを相談・共有できる仲介会社を選ぶことが非常に重要です。

以上のように、同じ中小企業でも、積極的な成長を目指す企業にとっては、売り手企業の有する顧客基盤・各種許認可・即戦力となる従業員・経営者の経験などは、成長を加速する上で必須のアイテムとなっています。つまり、廃業を検討する企業の出口戦略として、また積極成長を目論む企業の成長戦略として、M&Aはとても有用であることが分かっています。
しかし多くの売り手企業は、「業績も良いわけでもないし、買い手はつかないだろう」と取組検討前から諦めてしまうケースが少なくありません。前述のように、実は成長戦略としてのM&Aを検討している企業が求めているモノは、業績以外にも多くあります。例えば「業務遂行能力はあるものの、受注がなかなか取れない」という売り企業に対して「人がなかなか集まらず、仕事を受けられない」という企業のマッチングが、スモールM&Aの市場ではよく行われています。今、注目のスモールM&Aをしっかり活用することは、中小企業の勝ち残りに大きく寄与することとなるでしょう。

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